時実利彦『人間であること』
あらためて、自分にとっての大事な本ってどれとどれだろうわかんないなーとか漠然と思いながら、本棚を眺めていたらこの本が目に入った。
時実利彦『人間であること』(岩波新書)
- 作者: 時実利彦
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 1970/03/20
- メディア: 新書
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一見ひどく大仰なタイトルに思えるのだが、ざっと目次を見直すと、まさにそういう内容。
脳生理学が専門の筆者が哲学、社会学などさまざまな観点から、各種行動類型や思考形態について細かく章を分け記述している。
といってもパラパラとめくると、今流行りの唯脳論的な放談とは違う姿勢。
この本はたしか小中学生の頃に読んでいた。今読めば最新の科学的知見とは異なる記述もあるだろうし、あるいは今の私と考え方に違いはあるかもしれない。
だとしても何かの全体像について概観はできそうだ。チラッと読んだ限りでは、再読すれば当時よりはるかに多くの示唆を得られる気がした。まあ大人になったからさらに多くを得られるの当たり前だけど、その当たり前という程度を超えて多くの。
最新の時代の雰囲気を追ったりフィクションとしての「今の」文学作品から何かしらの感慨や力を得るだけではなくて、一歩引いた位置で、こういう少し昔の書籍群からその姿勢を学びとるというのもそれはそれで楽しく嬉しいことだと今思った。
私のこういう文章よりもずっとわかりやすく読んでおもしろく書いてあるので、やや古いということをのぞけば安心してすすめられる本。この手の大きく出たタイトルの本にありがちな、変に人間ってこんなものだとか傲慢にさせられるような心配もないと思う。(たぶん)
読んだこともあまりはっきり憶えていないような本でありながら、こうした本たちが、それでも今の私の一部をかたちづくりまぎれもなく血肉として生きているのだろう。
以上、リーディングバトンを書くのは難しい(けど楽しそう)という話でした。
追記:Amazonのカスタマーレビューを読むと、とにかく、人間らしさの全てが前頭連合野の発達に帰せられてしまう。その科学に基づいていそうでむしろ世俗の人間観に基づいているような感じの文章が、まるで10年前の心理学書を連想させた
という感想もありました。全部読み返したわけではないのですがそういう面もあったようには思います。ただ、昨今の風潮から言うとまあ許される範囲内ではないかなと、パラパラとばし読みで再読した感覚としてはそんな風にも感じます。ご参考まで。