スーダン・ダルフール危機情報Wikiが設置されました(お知らせ)

今日はテレビでロシアの人質事件の痛ましい映像が繰り返し流れましたが、別の地域でははるかに巨大な規模でさらに痛ましい悲劇が、長い期間、繰り返し、続いています。


極東ブログを運営されているfinalventさん(id:finalvent)が、スーダン・ダルフール危機情報Wikiを設置されました。

以下のような状態にあるスーダンダルフールについて、情報を広く共有するためのサイトです。簡単に引用します。

ダルフール紛争スーダン西部ダルフール地方で現在進行中の民族浄化です。民族浄化とは、特定の民族を虐殺など暴力によって駆逐していく行為です。

発端は民族紛争でしたが、現状、スーダン政府が支持するジャンジャウィードと呼ばれるアラブ系民族民兵が、地域の黒人住民(黒人のイスラム教徒を含む)を迫害しています。

2004年8月時点での概算で50.000人以上が既に殺害され、120万人以上が家を追われています。被害は止まりません。

ちなみに、Wikiとは、設置した本人だけでなく、誰でもページを編集したりページを追加できる仕組みのWebサイトをいいます。
私はまだWikiの編集をした経験がないので、具体的な説明は上記のWiki内の書き込み・編集の規則のページをご覧ください。


Wikiの運用に詳しいかた、スーダンダルフールの危機についての情報をお持ちのかた、それ以外のかたもぜひ参加しましょう。よかったらできる範囲でぜひ協力しましょう。
他で得た情報もスーダン・ダルフール危機情報Wikiに集約していけば、関連情報があちこちに散逸して探しきれないという事態を回避できます。(もちろんWikiから情報が集約された他のサイトへのリンクを張るのでもかまわないと思います。)

こうした緊急で重大な事柄については、だれが主体となって運営するか、どのサイトに集約されるかは重要ではありません。ただWikiは誰でも編集できるので、スーダン・ダルフール危機情報Wikiからたどれるのが便利です。

したがって、上のWikiを訪れればある程度包括的な情報が得られるようになることが予想されるので、積極的に運用に参与する予定のないかたも定期的に訪れることをお勧めします。

私がどのような形で関わることができるのか、またどのようなスタイルのWikiが望ましいのか(記事掲載の判断基準など)まだはっきり考えが固まっていません。さしあたって、これまで関連した記事を取りあげているブログには知らせてみるつもりです。


こうした問題を取りあげるにあたって私は何度か「想像力の問題だ」といった表現を用いています。別の言い方をすれば、「人間が他人の深刻な痛みや悲しみを知ってもなお平然としていられるのか、無関心でいられるのか」ということです。せめて心に留めておいていただければそれだけで、私は個人的にたいへん嬉しく感じます。人間に、またあなたに対して絶望しないですむからです。おそらく実際に苦しみ死にかけている人々も、見知らぬ人々が気持ちだけでも寄り添ってくれていると知れば少し気が楽になるでしょう。ここまで読んでくださってありがとう。

 人質は当局発表を上回る1500人か 露の学校占拠

産経新聞のサイトより。

2日に解放された女性教師は3日付イズベスチヤ紙に「生徒だけで1000人以上。その他に教師や父母らもいる」と説明。当局発表は「真実ではない」と主張した。

 地元治安筋は「生徒名簿では1150人。うち1−2割しか逃げていない」と指摘。「男性を中心に10−20人が銃殺され、窓から遺体が投げ捨てられたが公表していない」と明かした。

これ自体、どこまで信じていいのかわからないから難しいよね……。
強行突入してほしくないので危険性を強調したい犯人グループの意向を反映しているかもしれないし、
あるいは犯人グループに対する世論の怒りを喚起したい政府の意向を受けての修正かもしれないし、
地元治安筋は独自の利害関係を持っているかもしれないし、
もちろん女性教師のただ率直な報告かもしれない。
そして極度の緊張状態の中で女性教師の勘違いということもありうる。


困難な時代。


追記:産経速報一覧 http://www.sankei.co.jp/news/sokuhou/sokuhou.html#19:19

19:19 ロシア特殊部隊が制圧。学校占拠事件。児童ら救出、人質は15OO人か。激しい銃撃戦、犯人グループ逃走、死亡も。

さらに追記します。CNNのサイトより。CNN/REUTERS/APとありました。
特殊部隊突入し制圧、生徒大半が無事、ロシア学校人質

ロシア・北オセチア共和国ベスラン――ベスランで1日発生した学校占拠事件で、タス通信は3日、ロシア特殊部隊が同日午後、校内に突入したと伝えた。人質が閉じ込められていた体育館など学校を制圧した模様。

ロシアのプーチン大統領は2日、事件解決のため武力行使はしないと全国向けテレビ演説で強調していた。
(中略)
生徒158人が負傷し、病院に搬送されたとも報じた。
(中略)
約40人ともされる武装集団の一部は銃殺された模様。
(中略)
人質の正確な数は不明だが、ロシアのコメルサントなど地元紙は3日、総数は当局の発表を大幅に上回り、最大で約1500人に達している、と報じた。2日に解放された女性、子供26人の一部証言を基に伝えた。

また、武装集団の数は最高40人で、人質に食料、飲料水を与えることを拒否しているとも述べた。治安当局は、人質の数は約350人と発表している。

襲われた学校の在校生徒数は860人だが、事件が起きた1日は新学期の初日に当たり、式典などに参加するため多数の保護者らが学校を訪れていた。

引用の仕方には慎重でありたいのですが、これまでこのサイト(夏のひこうき雲)で取りあげてきた情報との違いを示すためにやや長めに引用しました。

一応はこれでニュースは幕引きということになりそうだ。しっかし。

 Passion For The Future、開設一周年によせて

橋本大也さん、Passion For The Future一周年おめでとうございます!
かなり早い時期からずっと興味深く拝読している、読者のsummercontrailと申します(長いので左近とも名乗っています)。
書評やサービス・ソフトウェアの記事など、たいへん参考にさせていただいています。有益な情報をいつもありがとうございます。


個人主義と商業主義」ですが、個人のサイトはすべて本人のビジネスと完全に切り離して運営しなければならない、だなんて決まってませんよね。人が全人格としてサイトを運営していればサイト中の記事が自分の仕事とつながってくるのは当然なので、批判をお気になさる必要はないと思います。少なくとも橋本さんのサイトでの紹介のなさり方は、「巧妙」というよりも誠実に思えます(失礼な表現がありましたらごめんなさい)。


Passion For The Future、これからも楽しみにしています!


(コメント欄はメールアドレス記入が必須のようだったので、大した内容ではありませんがトラックバックの形で書かせていただきました。)

 森博嗣とアイザック・アシモフ

山田さん(id:furamubon)(過去の記事のアンカー修正で二重トラックバックしちゃいました、めんご)の、あたかも「王様、裸に見えるんだけど……?」というような勇気から始まったモリモリ談義、続き。つってももうそんなに付け加えることはないんですけど。


森博嗣をけなすだけに終わるのはつまらないなあ、と思っていたのですが結城浩さん(id:hyuki)が日記でアシモフの作品に触れていたので思い出しました。(この私の記事は「ゆうき(勇気、結城)」と「ひろし(博嗣、浩)」がキーワードですね)。


森博嗣の作品が好きな方は、アイザック・アシモフを読んでみるといいかも!


「人間が書けていないという批判がある」「制約された中でのプロット(だけ?)が見所」「論理をあくまで破綻させずにいかに意外な展開に持ち込んで高揚感を味わわせるかがおもしろい」
もし森博嗣の『すべてがFになる』(ISBN:4062639246)にこうした特徴があるとすれば、それはそっくりアシモフの作品の一部にもあてはまるのだけど、アシモフの作品は私ははっきり好きです。仰々しく飾り立てずに緊迫感を醸し出すのがうまいのと、やや類型的ではあるが憎めない登場人物たちが原因かな。


「冷血女」だとか「おそろしく頭がよく有能だが人間味がない」などと言われるスーザン・キャルヴィン(アシモフのいくつかの作品に登場する人物)は、さしづめ、『すべてがFになる』のあの女性にたとえられます。どちらも女史と呼ばれていた気がするし。


アシモフはノンフィクションも含め多彩な作品を遺していますが、森の読者にお勧めしたいのは『われはロボット』(ISBN:4150114854)、ファウンデーションもの(銀河帝国興亡史シリーズ)の初期の数冊*1、あとは『鋼鉄都市』(ISBN:4150103364)、『はだかの太陽』(ISBN:4150105588)あたりかな。(最後に挙げた二作は密室の完全犯罪を思わせるミステリーを二人組が解くという点でも『すべてが…』と共通します)

なお『ロボットの時代』(ISBN:4150114862)やアシモフの他の作品も私は好きですが、一貫した論理性と硬質な手触りという森ファンの好みそうな特徴からは、若干外れた系統に属します。まあ、にじみ出るややメランコリックな感覚や意外性という点では森作品に通ずるものはありますし、一概には言えませんが。


私が『すべてが……』やアシモフ作品を読んだのはもう数か月前(!)だということに留意なさった上で、興味のわいた方はぜひアシモフもどうぞ。いずれもハヤカワSF文庫で出ています。