『社会科学における人間』、『菊と刀』、『バカドリル 頭痛』


 最近購入した本からいくつか、漫然と紹介します。『バカドリル』以外はまだ目を通していないことを先に記しておきます。

大塚久雄『社会科学における人間』

社会科学における人間 (岩波新書)

社会科学における人間 (岩波新書)

 迷いましたが、勢いで買っておきました。ウェーバーの『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』が読み途中で絶賛挫折中なのですが、巻末に掲載されている大塚久雄の解説は以前読んで、その語り口になぜか感銘を受けました。
 このことは夏のひこうき雲 -  岩波文庫のプロ倫の訳者解説、ぜひ読んでみてくださいや、夏のひこうき雲 - [レビュー] マックス・ヴェーバー『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』の、訳者解説を読みましたに少し書きました。当時は自分がクリスチャン(プロテスタント)ということを公にしていなかったのですが、今私が再度書くとすれば、解説についての雑感としてももう少し立ち入ったことを書くのだろうと思います。

 歴史上の人物と認める相手に対しては、敬意を持ってあえて呼び捨てにしているのですが、大塚久雄に対しては直接の面識がないにもかかわらず「大塚久雄先生」と呼びたい気がします。比較的短い一篇の文章に触れただけなのでなぜなのかよくわかりませんし、あるいはそのときの何か他の理由によるのかもしれませんが、いずれにせよ大塚久雄の名前はしっかりと記憶していました。


 そんな経緯があって、今回書店の陳列棚をだらだらと見ていたら目についたので、(ウェーバーのプロ倫をきちんと読む前に、頭を耕しておくために)と思い購入。Amazonのカスタマーレビューを今見ると、


一般ピープルにとって生マルクス、生ウェーバーは、あまりに難解で複雑怪奇である。そんなピープル達に朗報!と言わんばかりのかくも有難き著書。ちなみに本書もやや難解に感じられる方は、小室直樹の「痛快!憲法学」から読まれることをお勧めします。ここで自信を得ることができたら将来「プロ倫」読破も夢ではないでしょう。

 という評もあったので、意を強くしました。小室直樹の『痛快!憲法学』と言えば、以前essaさんが取り上げていらしたのでそちらも機会があれば読んでみたいと思っています。

ルース・ベネディクト菊と刀

菊と刀 (講談社学術文庫)

菊と刀 (講談社学術文庫)

 この本についてはこれまできちんと読んでいなかったのが恥ずかしい。それぐらいの古典的な日本人論の名著という認識を持っています。

 著者はじつはこの本を書いた時点で日本を訪れたことがなかったのに、内容は驚くほど的確だとか、第二次大戦に際してアメリカはこの本を参考にしただとか、日本人論と言えばこの本だとか、周辺的な情報は他の書籍やあちこちから知っていたのですが精読したことはたしかまだありませんでした(中学生の時にぱらぱらと目を通したことはあったかもしれないけど)。


 山本七平の書籍群も読んでみたいのだけど、まずはこれを読んでみたいと思っています。読み終わってからの包括的なレビューはたぶん書けないと思いますが、『菊と刀』から得るであろう多くの問題意識は、おそらくちらほら記事や浮雲のコメント欄に出てくるでしょう。

天久 聖一・タナカ カツキ『バカドリル 頭痛』

バカドリル 頭痛 (扶桑社文庫)

バカドリル 頭痛 (扶桑社文庫)

 これはずっと昔に友人が「こんなの好きでしょ?」と貸してくれた本の文庫版。今回発見して迷わず買いました。

 正直言ってすべてのページを熟読すべき類の本ではありませんし、そうしたいとも思いません。「おもしろい?」と尋ねられれば「いや、すっごくくだらない」と答えます。
 でも、ある意味では、「すべてのページに目を通していく中でしかこの本の面白さは味わえない」ともいえそうな気がします。
 玉石混淆ゆえの面白さという独特の風味。美術館で言えば順路に沿って、「石」の部分も含めた細部を丹念に鑑賞を続けていくうちに、シークエンスとしての曼荼羅的な全体像が浮かび上がり、その全体像のくだらなさが、あたたかで少し臭うようなユーモアとペーソスを醸し出すという感じです。

 もちろん「シークエンスとしての曼荼羅的」という表現は明らかにおかしいのであって、順路に沿わなければならないというわけではありません。パラパラと拾い読みしてもそれはそれなりに楽しめます。開いたページの目にとまった部分が、自分のつぼにはまれば爆笑できるし、まるでつまらなくて激しく腹が立つこともあるでしょう。たぶんまるでつまらないと思う部分の方が多いかもしれません(笑いに対して目の肥えた人ならなおさら)。
 それでも(少なくともどこかの章の)初めから読んでいくと、人によってはもやもやと何かが浮かび上がってくるでしょう。アルファ波だかシータ波だかが出ているのだと思います。


 だいぶ斜に構えた人が、暇で暇で時間をもてあましている男子中学生のような勢いで、いろんな時事やスタイルを巧妙に取り込んで書いたオサレなお笑いの本。男子中学生におすすめです。男子中学生の気分を体感してみたい人にも。


 ちなみに私は「憧れの先輩図鑑」がお気に入りです。この章だけのために買ったようなもの。

古くは紀元前、人類最初の学園生活がはじまると同時に、その恋愛対象もしくは憧れの的として存在したといわれる「先輩」。今でこそ、その外見は学生服、(中略)といった条件を備えたいわゆる「現代の先輩」が一般の概念として定着しているが、その永い歴史の中には今では考えも及ばない多種多様な先輩が存在したといわれている。

 ほんの少しだけ、「先輩」の例を引用してみます(本ではイラスト付き)。

憧れの先輩→
全国に分布し憧れられる。雨の中、捨てられた仔犬を優しく抱き上げる等の行動で異性をひきつける。

機械の体をもらいにいく先輩↑
神秘的な年上女性と電車通学を続ける先輩。通学の中で夢と勇気を覚える(原文ママ)ためこの姿に。

大昔の先輩←
1968年イギリスの考古学者により発見される。近くから出土した校章により先輩であることが判明した。

 上に紹介した2冊が栄養たっぷりの伝統食だとすれば、これはケミカルなジャンクフードみたいなもの。でもまあ好物なのでたまにこういうの買ってます。