去年の新聞を今ごろ読んでいます

 昨年12月27日の朝日新聞「惜別」の欄。内川芳美さん(東大名誉教授・元日本新聞学会会長)の欄から。

 自宅では、夜中まで書斎にこもり、古いワープロを愛用した。謹厳実直で、口数は少なかった。
 死後、書斎の机の引き出しから手紙が見つかった。妻の都子さん(73)にあてたもので、万年筆で書かれていた。「楽しい人生を一緒に送らせてもらって幸せだった。もっと二人でいたかったのに、それができず許してください」
 最後の「ラブレター」も、誠実さに満ちていた。

 手紙のことば、シンプルだが的確な表現なのだろう。これをセンチメンタルな常套句として嘲笑するのは、受け手の側の頑な(かたくな)さ。

 だが情感を揺さぶられることはたしかだ。