行為とその主体/まるごとバナナ

「文は人なり」かどうか?rucci bibourokuより)

 興味深い話題だったので私もコメントしたのですが、その時点で他にもいくつか思いました。さらにもう少し、雑にですが書いてみます。


 考える上でいくつかのポイントがある。

  • 「人格」の文章への表れと、「人格」のふだんの振る舞いへの表われの異同
  • 言動でしか他人を評価できないということ
  • 人格全体への評価・把握はそもそも困難だし、避けるべきだという価値判断
  • 作品の鑑賞の方法としての戦略、楽しさ


 (私が今書いている)記事の流れをとくに整えようとせずに、さらに断片的にあれこれ書いてみます。


 私がよく陥る罠ですが、病跡学(病蹟学)的な見方で作品を見てしまうと、作品が矮小化されてしまってつまらなくなる(説明不足ですがいったん先に進みます)。

 また、わざとワルぶっているけどほんとはこの人はこうなんじゃないかとか、いい人ぶっているけど(以下略)みたいな目で見ると、認知的不協和によって書き手を過大評価(あるいは過小評価)してしまう危険がある。書き手も無意識のうちにそれを予め察して、強がってみたり逆に謙遜してみたりする。自分を演出する道具として(のみ)文章が用いられる。
 それを避けるためには、一応書かれた作品と書き手を切り離して評価しようという禁欲的な態度が必要な場合もある。書き手としても自分を評価してもらうのではなく書かれた文章を勝手に利用して欲しい、という意識で書いている場合もある。


 直接つながるわけではありませんが、id:yukattiさんの記事[web] 「文章」について、わたしのスタンス、と、その(yukattiさんの)記事の日のコメント欄[web] ひとりの人間がいろいろな表現形式を用いることも、その必然があるからだ――のことを思い出しました。


 で、このあたりまで書いていて各記事のアドレスを確認しようとしていたら、yukattiさんもrucciさんの「文は人なり」かどうか?に反応されていました。日本文学界での方法論とその扱いみたいなものも参考になります。

 私もyukattiさんと同じく、「文は人なり」かどうか?へのid:soulflowerさんのコメントが興味深いと感じました。


 私自身の考えとしては、単純化して書けば

  • どんな文章であれ(たとえば薬の注意書きでさえ)、必ず、そこには書き手が否応なしに表われてしまう。また読むときにはその人となりが自然と想像される。
  • しかし、その私の中での想像は常にどこまでも不完全なものだ。事実とは大きく異なる場合もある。
  • 逆に、「想像が不完全であること」「事実とは異なる場合もあること」を意識しすぎると、逆にその意識に裏切られる場合もある。←このことをてこにして偽悪的に自分を演出する人も多い。(このへんはごく曖昧にしか書けないが)
  • だから、何か文章を読むときには、私は一応文章のみを読もうとしている。私の中で自然と想像される、書き手の人となりについても、意識的に、「文章から見える範囲」にとどめようとしている。つまり、想像されてしまうからこそ、想像についてはストイックであろうとしている。
  • だがそうした面倒なハードルをくぐり抜けてもなお、残るものがある。それは作品の味わいに不可欠なものなのかもしれないし、厄介なものとしてとらえることも可能だろう。


 で、結論とかはとくにありません。嘘で自分を飾る人は予想以上に多く、その手口はかなり巧妙なので気をつけましょう……これは結論というほど大仰なものでもないな。


 あ、この記事のタイトルに書いた視点を忘れてた。
 〈文章を含めた言動という行為(結果)〉と、〈その行為主体〉をかりに安易に結びつけて評価してしまうと、ひどく誰かを憎んでしまったり、あるいは逆に極端に入れ込んでしまったりする。感情的な振れ幅が大きくなる。だから、行為がよいか悪いか(もっと限定していえば、ある文章がどのような価値を有するか)と、その主体(書き手)への評価は一応分けないと……まだるっこしいな。「作品についてもそうだが、人間についてはなおさら、新しく評価し直す余地があり得ることを考慮に入れておかなければならない。何かを把握すること・評価することについての限界について、自覚的でなければならない。」というような感じかな。

 これは私が死刑制度に反対する理由の一つでもあります(超唐突ですネ☆)。ただの人間が、同じ人間の誰かを「お前は死ぬべきだ」という最終的な判断を下す立場にはいないでしょうと。


 まあ以上の話はそれはそれとして、書いた人についてあれこれ考えたり想像したりする楽しさはわかるので、それを止めた方がいいと言いたいわけでもありません。


 なんかこのぐらいの出来でも掲載した方がいいかなという気分なので更新。もったいないお化けがでるから〜