『幸福否定の構造』
- 作者: 笠原敏雄
- 出版社/メーカー: 春秋社
- 発売日: 2004/03
- メディア: 単行本
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この本は……どう評価したらいいのか本当にわからない。
ベルクソン、マタイ伝、論語(だっけな)、そういった各種の思想・世界観と有機的に結合していたり。
なんだっけな、ヒーリングバックペインだったか、id:finalventさんが紹介していらしたいくつかの本だとか、あと大森荘蔵の無脳論とも整合する。「がんから始まる」のNew Beingとかも。また、理解している範囲でのテーラワーダ仏教、いわゆるキリスト教的発想のいくつかとも関連づけて考えることができた。あとは自傷や身体改造に走る仕組み、オウム裁判での被告の言動の分析など、それからあの映画エスの看守と囚人の実験のあれとか、非常に説得的にも感じられる。ADHDなどについてはどうなのだろうとも思うが。
他にも、名倉さんのプチ日記だとか、『長いお別れ』の主人公にみられる態度だとかも連想された。癒し系の欺瞞みたいなものへの批判も、よくある感じとはまた別の色合いを持っている。いわゆる積極思考とも違う。
この本を読みながらこのはてなダイアリーだけでなくネットでも、多くの人の文章を思い浮かべていたのだけど、下手にお薦めはできないのでお名前は挙げません。
著者のスタンスや姿勢はおおむね誠実に(つまり懐疑と一定の留保をとどめているように)思える。
ニューエイジ的な桎梏からは逃れられているような気もしたのだけれど、著者が訳している本のタイトル群からは、まさにソッチ系としか思えないような。超能力だとか超心理学だとか。
ただ、著者が言っていることが正しいのだとすれば、結果として私が紹介することは……うーんという感じだ。私の中での強い懐疑と反発も予め理論に組み込まれているのは、一般的には「巧妙だから」とも言えそうだけど……。
本書の当否にかかわらず、いわゆるソッチ系に行くことを勧めようとは思わないのであまり紹介したくないというのもある(私が今は田口ランディを薦めず自分も読まなくなったのは、そのあたりの感覚の結果なのだろう)。
まあ著者の理論が大筋で正しくないとしても、個々の部分で非常に鋭い示唆を数多く受けるのでこれは何度も読み返すと思う。
id:finalventさんにぜひ読んでみていただきたいのですが、お願いできませんでしょうか。
こうしたテーマについて多様な、かつ、必要な観点を持って評価できる人をfinalventさん以外に存じ上げません。finalventさんならこの本をどう読むかということを伺いたいし、またfinalventさんの知見の枠組みにも大きく影響を与えるのかもしれないと感じます。(この本の価格以上のはてなポイントを差し上げてでもお願いしたいのですが、それはかえって失礼にあたるような気がするので止めておきます)