1の補足

 私が『幸福の王子』のレビューを始めたことを、「+」のゆさんが紹介してくださいました。

「誰々ちゃんはちゃんとできるのに何であなたはできないの」の使い方の良い例、というのが今の私の知りたいところでした。

 とゆさんがそのコメント欄でおっしゃっていました。これが私への問いかけかどうかにかかわらず、少し前回の記事に補足したいと思います。(前回のレビュー「1」は、今回の記事のタイトル中のカテゴリー名[幸福の王子]をクリックしてご覧ください。)
ピグマリオン効果という言葉を持ち出した辺りで話を端折っていましたが、つまり以下のようなことです。


 誰々ちゃんはちゃんとできるのに何であなたはできないの、という表現は、基本的には否定的なニュアンスを帯びてしまう。しかし、比較の対象が高く見上げる存在(かみくだいていえば「すごく偉い人」)なら、(あなたもあのすごく偉い人みたいにできるはず)という期待が言外にこめられているので、子どもにとってはむしろ自信を持つきっかけにもなる。
 自分だってやればできるんだ、という誇りと肯定的なセルフイメージを持つと、自己成就予言というか積極思考というかムニャムニャ。このあたりがピグマリオン効果という言葉で言いたかったところです。成長過程にある子どもにとってはとくに大事なことだろうと思います。

 ただ、実在の「すごく偉い人」を安易に持ち出すと、「そんなに偉くはなれない」「あの人だってほんとはいやなとこもあるはずだ」と反発してしまう場合もある。実際、あとでメッキがはげてしまう場合もある。
 しかし架空の存在である幸福の王子については、そのような心配がない。そもそも理想化されある程度デフォルメされたキャラクターであることが前提なので、張り合おうとか実際になれるかどうかという迷いは子どもの中で生じない。

 ここで話は戻るが、それでも「何であなたはできないの」という表現は、基本的に否定的なニュアンスを持つゆえにやはり好ましくはない。しかし子どもがむずかって無理なことを言い続けていれば、母親としては、弱音や愚痴をぶつけたくもなるだろう(弱音や愚痴を無理に内心に押さえ込もうとするのは、それを見ている子どもの教育上も、また母親の精神衛生上もよくない)。その弱音や愚痴のぶつけ方としては、引き合いに出す対象として幸福の王子を選んだのは「賢い」といえる。


 そのようなことを考えました。

 テキストの続きについてはまた改めて取りあげます。遅々として進まない感じで行こうと思います。チーチチチ チップァン デール。