巨大なジャングルジム

 しばらく前、数分後のある瞬間を待って建物全体にひどく張りつめた空気が充満しているとき、ふと

あたりの光景を大きな立方体で格子状に区切ってみました。


 いったん想像の中で可視化した、ピアノ線のような限りなく細く透明な直線でどこまでも遠くまで串刺しにする。升目のある紙に書かれた絵のように。
縦・横・高さの座標軸に沿って伸びている直線群を、徐々に増やしていく。元の形をたもったまま、感覚も鋭敏なまま、認識によってさらに細かく切断されていく世界。


 イメージの中でそのグリッドが極限まで増え、太さを持たない直線群が逆説的にすべての空間と存在を刺し貫いて埋め尽くしたとき、

 ふっとすべてのピアノ線が見えなくなる。以前にもましてあたりの光景がみずみずしく私の知覚をうるおした。
右斜め後方の男性の体臭、微かに遠くで響く足音、高い天井から頭にやわらかく降り注ぐ空調の風。ひじに触れている机の温度。


 結末も決めず、なんとはなしに思いついた空想ごっこみたいなものでしたが、数秒でこのような意外な地点に到達したのがおもしろかった。一般的な意味とは別の意味で、頭の体操になったな。


 目の前に壁がないのに壁があるように装うパントマイムと、やや近い。