続・紳助もんだいと対話と問題解決のプロセス

うわーいid:kowagariさんからトラックバック(「模倣犯」時代からたまに拝見してます)。すごい数のアクセスだー。


反論とかではなくてちょっと補足。あまり厳密な話にする余裕が今ちょっとありませんが、ご容赦を。

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昨日の私の記事の該当部分や引用部分など読んでいただくと、kowagariさんがどのような構図としてみているかという点からいって、紳助に同情的、と私がみたことは間違っていないと思います。ここは別に大事なところでもないし強調するべきでもないと思うので、さらっと終わらせたいのですが。

もちろん、kowagariさんが、実際の生身の存在としての紳助や女性に対して批判しているわけではないというのはわかっています。あくまでどのような「構図」としてみているかということです。段落わけの便宜上「(簡単にいって)紳助に同情的な立場」と小見出しをつけてみたんですが、それがまずかったかなあ。

そして、紳助が暴行を行なうまでの段階の、紳助の側から見た話としては、私もそんなに違う考えは持っていません。

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少し詰めて考えてみると、kowagariさんが追記で書いてらっしゃる部分、つまり「無礼な人間にどう対処するのが賢いか」についての考えが違うと思うんですよね。私なりに言い換えさせてもらうなら、「自分と考え方が違う人間、自分から見て無礼に見える人間にどう接すればよいか」。


kowagariさんは「対処のしようがないのでファンタジーで溜飲を下げるしかない」という考えのようですが、私はそもそも、そういうファンタジーに頼らざるを得ないような形でストレスを溜めていくこと自体におそらく問題があると思うんですよね。

「問題がある」というのは責めているのではなくて、そのような受け止め方(ファンタジーに頼らざるを得ないような形でストレスを溜めていくという受け止め方)をしない方が楽だし解決に向かうのではないか、と思うんです。


あいつの「言動」はおかしい
→あいつはおかしい「人間」だ
→あいつを殺したい

とダイレクトに繋がっていくその発想自体が、誰にとっても無益というか。行為に対する評価を主体に対する評価にそのままスライドさせるのがよくないというか。「簡単にいって」紳助の「やり方」に対して批判的、「簡単にいって」「紳助」に対して同情的、という前回の記事の小見出しもそういう意識で書きました。

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じゃあどうすればいいのか?ということは昨日書いたとおりです。「あなたの言動はこういう点でおかしいと私は思うが、どう思うか」と、伝わるように伝える技術を磨いて話す。
(この部分は既に挙げた圏外からのひとことの記事に詳しいのでぜひリンク先をお読みください)、それで駄目なら法や手続きにのっとってことを勧める。

もちろんそんなしんどいことは(自分・相手のコミュニケーション能力や状況などによっては)無理なことも多いので、ファンタジーを思い描いて気晴らしをすること自体を否定するわけではありません。ただ、そうした発想は(理解不能な異質な存在として他者を規定し、議論自体を最初から放棄し、怒りをため込んでついには攻撃に至るという)テロリストやいわゆるブッシュ政権の発想にもつながるということについて、自覚的でありたいとは思っています。


「まともなシト」「ワルいシト」「まともぶってる変な人」と自分や他人にレッテルを貼って、「あいつらはおかしいけど、下手に文句言ったら面倒だから空想の中で殺してやる」と考え、ストレスをためていくと、ファンタジーで溜飲を下げるのではすまなくなったときに実力行使にでかねない。つまり、我慢する方向でいくと、我慢の限界というのが必ず出てくる。これは批判ではなくて、考えの枠組み自体を変えた方がよいのではないかということです。


あと、ゲーム脳理論は私もおかしいと思うし、ゲーム脳理論を振りかざして空想の世界すらも奪おうとするのはさらにおかしいと思う。ま、これは別の話ですね。

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実際の事件の事実関係についての記述としては、

http://d.hatena.ne.jp/furamubon/20041102#1099360040
にTVコメントによる経緯があります(山田さん、お手数かけました)。
あと
紳助号泣謝罪「僕が100%悪い」スポニチアネックス)も発見。

昨日私が書いた

私が知っている範囲では、「女性が社外の人に対して、吉本の幹部のことを敬称を付けずに話していたら(これは当たり前のこと)、女性が同じ吉本と知らなかった紳助が激怒。同じ吉本と知って余計に激怒」というわけのわからない経過なので、女の人にも非があるのは明らか、とまでは今のところ断言できない気がしました。

という当初の印象は、「社外の人に対して」という点で違ったようですね。

私が紳助の立場なら、その場で「そういう言葉遣いはその方に対して失礼だ」としばらく話して、それでもわかりあえないようなら、人事に言う(ただし社内で上司を呼び捨てにするのは常識はずれ? : Ideal Breakを読むと、一概に常識はずれとも言えない気がします)。
仕事上のことなら本人が仕事上のデメリットを受ければいい。別室に連れ込んだのがまずかった。密室だからあったかなかったかうやむやにできるし、仕事の力関係上うやむやにできるし、テレビや芸能界としては、吉本との関係からいっても紳助さん側をかばう方にいくだろうし。それを狙ったと思われても仕方ない(ただ横澤さんの娘というのが本当なら、うやむやにはできないけど。だから今回全面的に謝ったといううがった見方もできる)。


女性の側の行動に目を移すと、少なくとも実際に殴ったり髪を引っ張られたり鞄を踏みつけられたり、唾を吐きかけられたりした(と言われているような何らかの行為の)あとでは、女性の側としてとても引っ込めないのもわかる。実際の程度はわからないけど、そういう類のことってされたらほんとに不愉快だし、傷つくし、ひどく動揺するものですよ。同じようにやり返さずにその場で110番というのはまあ、最善ではないにしてもまだよかったかなと。


なんつうか、裁判に持ち込むこと自体が悪い、身内でおさめろという認識が広まると、ますます泣き寝入りせざるをえない人が増えると思うんですよね。

http://d.hatena.ne.jp/km_bm/20041102#p499曰く「こんなもん吉本にとって大損害ですよ」というのはその通り。そして個人の身体の安全よりも会社を重視するそのような姿勢が、今回の事件につながったのだと思いました。「吉本は芸人から金を搾り取る、会社や先輩との上下関係が絶対」というイメージを、吉本の芸人が冗談としてネタにしますが、今回(わざとネタにして問題を矮小化しなければいけないほど実情は深刻なのかもな)と感じました。あと、国会議員の目はなくなったか?(その悔し涙でもあるかな?)。


泣いている紳助を責めるのはかわいそうだけど、「紳助がやったことはそんなに悪くない」という風にかばうのはどうかと思う。

「やったこと」は明らかに悪い(真相はすべて藪の中というほどの難しい事案でもないと思う)、でもだからといって紳助という「人間」が即悪いということにはならない。それでいいんじゃないのかな。

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さらに話を広げてみますが、イスラム圏の人たちが、アメリカの無神経な経済的文化的「侵略」に対して長い間怒りと理不尽な思いを抱いていたことを背景にして、一部の人がテロを起こした。しかしテロを起こされたあとでは、アメリカが自分にも非があったと認めるのは難しいし、とても引っ込めない。みたいなことを連想しました。

我慢したり暴発したりせずに、相手の言動のどこがおかしいと自分が思うのか、お互いにねばり強く話していかないといけないんだなあ、めんどくさいけど、という感じです。「話を聞かない人」の話も聞かないといけない。繰り返しになりましたね。

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なお、kowagariさんは[メモ] 俺メモ考えるきっかけになったことは書かないほうがいいと書かれています。他のかたのブログでも、考えるきっかけになったことをあえて書かずに抽象的な話だけを展開している記事をたまにみかけますが、意図がかなりわかりづらくなっている場合があるので、事実関係と明確に切り離した上で書くのなら問題はないのでは。それで仮にひどい言葉をぶつけられたとしても、それはぶつけた側の責任だから。


事実関係とそれを離れた一般的構図、生きにくさということについての記事・コメント欄での対話としては、私の場合
[Web][雑記] 「歴史の歪曲」に対する正義感からの行動、について
[Web][雑記] 正義感からの行動について・続
10月14日のコメント欄
[Web][雑記] みたび、「正義感からの行動について」
10月15日のコメント欄
がありました(だいぶ長いので全部読み通す余裕のある人だけどうぞ)。


あー長くなった。なんかリンクの貼り方がおざなりだとか筋が読みづらいとかおかしなところたくさんあると思うけど、まー意図を汲み取ってやっていただければ幸いです。しんどいはしんどいね。