けっして人を「評定」しない


 今ではだいぶ改善しましたが、私はどうやら顎関節症だったらしい。顎が開きづらかったり、軽く開けるとぱきっと鳴ったりしていました。
まあ、森高千里顎関節症になったことがあるそうですし、私の友人ですごくハンサムな男性も顎関節症だったので、これは美しい人間がなるものだと決めつけることにしています。というのが持ちネタです。

 顎 鳴るしすとです。


 ここで終わってもいいのですが、まだ話には続きがありまして。


 前に大学の授業中、何気なく顎をぱきっと鳴らしたところ、先生が「ガムを噛んでいる人、教室から出なさい!」と怒鳴りました。
なんのことかわからなかったのですが、こちらを見すえているので、(私が顎を鳴らしたのがガムを噛んでいるように見えたのだ)とわかりました。

 ガムなんか噛んでません、と言おうかとも思いました。でも大きな教室で声を張り上げて「顎の関節を鳴らしただけです」と言い返しても、理解されにくいばかりか、余計に授業の迷惑になるだろうと思ったので、鞄を持って教室を出ました。

 むきになって言い返すのは苦手ですし、あれでよかったと思っています。自分が憎まれるのは屁でもありません。(いや、屁ぐらいはあるかな。)

 たまに自分はどうか?と顧みます。相手の事情を知らずに、勝手にこうと決めつけて軽蔑したり怒ったりはしていないか?


 聞いた話ですが、夏目漱石の話。夏目漱石が学校で教えているとき、生徒の中に、両腕の袖を、なんていうんだろう懐手のようにして、両手とも袖から出さずに授業を聴いている者がいたといいます。
 漱石は、自分は一生懸命教えているのにその態度は無礼じゃないか、と強く叱った。そこでその生徒は腕を見せた。

 生徒には、両腕の手首から先がなかったのです。

 漱石は深く恥じ入って謝ったそうです。